大切な貴方へ花を贈ろう
〜芍薬〜



「殿!」


聞きなれた声に扉を開けてやった。
初めに視界に飛び込んできたのは溢れんばかりの芍薬の花。
扉の外にはを両手いっぱいに芍薬を抱えた趙雲がいた。

部屋に招き入れると、彼は背筋を伸ばして申し訳なさそうに言った。
「申し訳ありません。両手が塞がっていたものですから。」
「こんなに沢山…どうしたのだ?」
「とても美しく咲いていたので、少しばかり頂いてきました。」
「…少しか?」
「少しでいいと言ったのですが、こんなに切って下さって…。」
困ったように言う趙雲に自然に笑みがこぼれる。
「しかし、花を贈る相手が私なんかでいいのか?」

受け取った花束に顔を埋めるようにしてからかうように言えば

「殿に、見て頂きたかったのです。」

頬を紅く染め、消え入るような声で言う。
戦場での勇姿とは別人のような様子に、クスリと一つ笑って。
「ありがとう。」

「今度、咲いている場所にも連れていってくれるか?」
「はい。喜んで!」


本当に嬉しそうに笑う趙雲に、なんだか自分も嬉しくなった。



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