鬼百合と車百合



書簡を届けに執務室を訪れた馬超は机の上に飾られた花に目を留めた。

「百合か。」
「車百合だ。美しく咲いていたからと、趙雲が持ってきてくれた。」
「ふーん。」

凛と咲く白い花をじっと見つめる馬超を見て、劉備は笑って言った。
「趙雲が車百合なら、馬超はさしずめ鬼百合か。お前は派手だからな。」
「同じ百合なら劉備はどっちが好きなんだ?」
「決められないよ。どちらも良い所がある。」
「…」

明らかに納得していない顔をする馬超。

「鬼百合はどこに在っても人目を引く存在感。車百合は鬼百合のような華美さには欠けるが、清楚な美しさがある。私はどちらも好きだよ。」
「決めろと言ったら?」

真意を見透かそうとひしと目を見据える。
しかし、劉備は微笑むだけ。


「それでも…私は欲張りだから。」




いつもそうだ。
微笑んで、はぐらかすだけ。



「皆、大好きだし大切なんだよ。」
ふわりと微笑まれ、馬超はふいと顔を背けた。

「…お前は狡い。」
「そうだな。私は狡い。」




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車百合 純潔
鬼百合 華麗



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