響恋



じんわりと、やんわりと心に響く。
この想いを人は恋というのでしょうか。
ああ、この歳にもなって恋などと。

「孔明。」





+++++++++ 響恋 ++++++++++




「孔明。」

「これは、我が君。如何なさいました?」

「我が軍師殿は用事がなければ声をかけてはいけないのか?」



ふとした違和感に、ああ、と思い当たる。



「しかし、何かお話があったのでしょう、劉備殿?」

「別に話などないよ、諸葛亮先生。」

「それでは、玄徳様?」

「ふふ。なあ、孔明。散歩に行かないか?今日はとてもいい天気だから。」

「はい。喜んで。」




孔明、と私の名を呼ぶその声の、
何気無い日常のやりとりの、なんと心地良いことでしょう。



水魚は打てば響く。そんな関係が理想。
殿が散歩に誘いたかったのは軍師殿でも先生でもなく、孔明なんです。
そんな話。


→モドル