カツコツと軽快な音をたてて廊下を歩く人物がいる。
元々派手な容貌だが、腕いっぱいの薔薇を抱えていることでさらに目を引く。
彼は目的の場所であるこの城の主の部屋の扉を軽くノックした。
「劉備!いるか?」
「馬超?」
すぐに目的の人物がひょっこりと顔を出す。
劉備は馬超を見るなり驚いた顔をして
「これはすごいな。一体どうしたんだ?こんな沢山の薔薇…。」
「沢山咲いてたからよ、綺麗だなって言ったらそこの主がくれたんだよ。俺は花なんて飾らないからアンタにやろうと思って。」
馬超らしいと思い、クスリと笑って大量の薔薇を受け取った。
「ありがとう。」
「気を付けろよ、刺がある。」
馬超よりも小柄な劉備では両手いっぱいになってしまい、顔まで薔薇に埋もれるような形になった。
「痛っ。」
「言ったそばから何やってんだよ。ほら、見せてみ。」
「なに、大したことはない。」
「血が出てる。」
馬超はおもむろに劉備の白い指を口元へと持っていき、軽く口に含んで指先に滲んだ血を丁寧に嘗めとった。
「ひゃあっ!?」
「後でちゃんと薬付けとけよ。」
ひらひらと手を振って馬超が出ていった後には赤い薔薇を抱え、頬を赤く染めた劉備が立っていたとか。
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おまけ)))
後日、馬将軍が殿に抱えきれないほどの薔薇の花束を送ったらしいと城内で噂になり、色々大変だったとか。
以下大変だったことの一部。
「馬超!!殿に結婚を申し込んだというのは本当か!?」
駆け込んできたのは趙雲。
手には何故か豪竜胆。
「はあっ?何のことだよ?」
「お前、殿に赤い薔薇を贈っただろう!?」
「だからって何でそうなるんだよ!?」
「軍師殿が言っていた。赤い薔薇は求婚の印だと!」
(あの野郎…。)
その後もそんな内容で何十人にも絡まれたが、それが孔明の策略によるものかは定かではない。
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