飴玉



「嫌だ…」
「もう逃がしませんよ。」


カツカツとゆっくりと近付く。


「やめてくれ…嘘だろう孔明…?」
「そんな御顔をされても無駄です。」


ひんやりと冷たい手。
びくりと劉備の身体がはねる。
彼の手にあるものを見て劉備はさらに青ざめた。

「お願い、だから…」



「駄目です。さ、お薬を飲んでもらいますよ。」
「粉薬は嫌いなんだ。」
「知ってます。」
「苦いし。」
「薬ですから。」
「これくらい勝手に治る。」
「いつまでも治らずに苦しい思いをするのは貴方ですよ?」
「そうだ。私の責任だ。だから、いい。」
「駄目ですよ。」
「だから…」
「貴方が苦しいと、私も苦しいんです。」
「え…?」

驚いて顔をあげたら、突然口付けられた。

「んっ」

孔明の舌の代わりに何かが流れ込んでくる。


…苦い。


「ん"ーーっ!」


ごっくん。

「飲みましたね?」
「酷い!」

涙目で抗議すれば、もう一度口付けられる。

「嫌だって…ッ」

甘い…?

「口直しです。」

口の中でころころしているのは飴。

「孔明…」
「なんですか?」
「ありがとう…」


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甘―――い!!!
いや、なんかもうごめんなさい。
殿は薬くらい普通に飲めるよ!
オブラートすらいらないよ!
夢見たかっただけだよ!



→モドル